王寺動物病院

2018年7月23日 (月)

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シニア犬のケアに力を入れている動物病院

王寺動物病院

 

 

高齢犬のケアは社会問題になっている昨今。今後も、動物病院のサービスとしても高齢犬のサービスの充実は避けては通れません。

しかし、現状なかなか高齢犬のサービスを充実させている動物病院は多くありません。今回のテーマは、「動物病院としてのシニア犬との向き合い方」

「シニア犬へのサービスを充実させたいけど、具体的にどういったことをしたら良いのかわ

からない」という院長先生必見の内容です。

 

 

今回話を聞いたのはこの人!

 

﨑山   法子(さきやま   のりこ)氏

奈良県 王寺動物病院/取締役 動物看護師長。 

1975 年 大阪府生まれ

1996 年 家政科の短期大学卒業。同年、王寺動物病院に就職。

1999 年 日本小動物獣医師会動物看護師 認定

2003 年 主任動物看護師 就任

2005 年 取締役 主任動物看護師 就任

2006 年 日本動物看護学会動物看護師 認定

2012  年 取締役 動物看護師長 就任

動物看護師統一認定機構 動物看護師 認定

 

 

動物看護師として、一次診療に携わりながらスタッフ指導や学会活動、病院経営にも参画している。結婚・妊娠・出産を経ても動物看護師として、働ける環境を作って行きたい。

学会発表として「待合室における飼い主の意識調査」「意識レベル評価の院内統一を目指して〜簡易CS作成の試み〜」「動物看護師が担う犬の献血活動」「心肺蘇生した猫の一例」

尚、「意識レベル評価の院内統一を目指して〜簡易CS作成の試み〜」「動物看護師が担う犬の献血活動」について論文発表。

 

 

 

ーー今日は取材を引き受けてくださり、ありがとうございます。今日はシニア犬に特化されている動物病院様ということで色々とお話を聞かせてください!

まず、先ほど見せていただいたデイケア用の部屋を見ていて感じたのですが、これは他の部屋とは雰囲気も含めて違いますね。

 

 

そうです。デイケアルームは、全く入院室とは違ったコンセプトで作られています。それは家庭と同様の雰囲気に近づけたかったからです。医療従事者がこんなことを言うのはいかがなものかと思いますが、老齢動物を入院室に入れて急に様々な検査だ、処置だとしてしまうと、ストレスが影響するのか、本当に亡くなってしまう動物もいるのです。環境の変化が免疫にかかわるからでしょうか。老齢はそういう動物だということを頭に入れておかないといけません。

 

老齢動物の「ストレス」が一種のステータスみたいになってしまうと困りますが、急に家族と離され、環境の変化が起こり、最初はそれほど悪い状態でなかったのに、また治療しているにもかかわらず、回復できずに衰弱して亡くなっていくという経験もしているので、老齢動物に配慮した、入院設備で預かりたいという想いから、デイケアルームが誕生しました。

 

土をイメージした床と、木々をイメージした壁紙、青空をイメージした天井でできています。老齢動物はお散歩の時間や状況も限られていると思うので、自然を意識した、リラックスができる環境を作りました。そして外が見えるように、大きな窓が部屋全体を明るくしています。お預かりの時は、動物は囲いもなく自由にしていることもありますが、複数頭いる場合や、動きを制限したい場合、ほかの動物のご飯を食べたり、徘徊したりする予防として、簡単なフェンスで囲ってお世話をすることもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー定期的に飼い主さんもやっぱり来られるんですか。

 

デイケアなら、面会に来たりすることはあまりありません。面会に来られる状況なら、家で看れている方が多いためだと思っています。

 

ショートステイでも、長期で預けられている場合、その状況(飼い主さんが入院している、介護疲れしている)によっては面会が困難なこともあるので、その場合は電話での問い合わせで対応します。長期の場合や、動物の今後に対して気がかりなことがあり相談しなければならない場合は面会にお越しいただいて話をさせていただくことをお勧めしています。ただ、介護疲れでもう見るのがつらいという方などに関しては、短くて1~2週間に1回、長い方で1~2ヶ月に1回会いに来られます場合もあります。

 

色んな飼い主さんの事情があるので、そのような方が定期的に病院に来るというのは難しくなっています。

 

そして、長期の場合、料金は定期的に入れていただく形にしているので、

「お金だけ入金しにきました」

と、いう感じのこともありますけど、できれば会って帰ってもらいます。

 

入金に関して、通常入院も長期のショートステイも同じような形態で料金をいただいていますが、通常入院での場合未収金が発生することがありますが、デイケアやショートステイの場合、未収金はほぼ発生していません。

 

わたしたちとしては、定期的にデイケアを利用して頂いて、飼い主さんの介護の負担を減らしていただくということを目的としていたのですが、実際はそうではなくて、「必要な時にお世話してくれる施設」と思っていらっしゃるみたいです。

 

自分が外出している間が心配、夜鳴きで大変など、困ったときに相談に来る、預けに来るといった形が多いでしょうか。

 

環境の変化がストレスになると最初に話しましたが、いつかの時のために慣らすし預けをしてみるという飼い主さんは、少ないですね。お勧めすれば、少しは考えていただけますが。

 

老犬の介護が必要で、お仕事されていてこの日は出張に行かないといけない、旅行に行くけどペットショップでは心配、だからその日だけというのが多いでしょうか。定期的にというのは想像していたよりも少なかったですね。

 

ーーなかなか事業として取り組むのは厳しそうでしょうか。

 

色々な所でこういう話をしているのですが、事業として取り組むにしては少し難しい面もあるかもしれません。

 

受け入れる側のスタッフの数も必要ですし、ケアもただ預かるのとは主旨が全然違うので、大変でしょうか。システムがしっかり構築されていないと、スタッフに疲弊がくるか、動物に 負担がかかるかのどちらかになってしまいます。

 

飼い主さんは預けることで、自責の念や気がかりで気をもんでらっしゃいますので気苦労はたえないみたいです。また、預かるからには、預かったときと同じ状態もしくは、少しでも良い状態でお返ししたいので、細心の注意が必要です。そのケアを実施することは、飼い主だけはでなく、私達医療従事者にもケアしていく、看取っていくという覚悟が必要だと思っています。

 

老齢動物の介護や看取りで、心を病んでしまう飼い主さんもいらっしゃるなかで、何とか動物を穏やかに看取れる飼い主さんになっていただきたいというか、命が終わることは特別なことではなく、生の営みの中では普通のこととして理解していただき、見送ってほしいと思って、診察時間中には十分にお伝え出来ない内容を含めた高齢動物の手引書みたいなものも作りました。

 

「老犬ってなに」「検診を受けましょう」「予 防をしましょう」「食事管理」「運動の仕方」「散歩の仕方」「排泄について」「痴呆」からいろいろな生活環境、かかりやすい病気・・・。

あとはコラムなどを入れたりしています。

 

他には

介護グッズの紹介もしています。

飼い主さんとしても看取りについてわからないことが多いようで、こういった冊子を置いていると、結構たくさんの方が持って帰られます。動物が亡くなった後、親御さんが子どもたちに亡くなった事実をどう伝えていいかわからないともおっしゃるので、子どもたちへの対応の仕方や、同居犬がいる場合、亡くなった時の同居犬の心の変化についても。あとはよく ある質問で、「どうやって死んでいくんですか」、「その時私たちにできることはありますか」 とか・・・。

 

あとは、「埋葬の方法」「看送り方の手順」ですかね・・・。実際の他の飼い主さんのコラムも見たりして、

 

「ペットロスってみんなに訪れるもので異常じゃないんですよ」

 

ってことも伝えていたり、

 

「何かの助けにしてくださいね」

 

という形で、「虹の橋」の話もします。

当院はちなみに無料で配布しています。(笑)

 

実際、飼い主さん向けの老齢セミナーも行いますが、そこで話をする際は、必ず看取りについてもしっかり話をします。それだけ看取りに重きをおいています。

 

そうやって、旅立ちの準備と心のケアに役立てていただくといった感じです。飼い主さん、亡くなると寂しいですよね。つらいですよね。もっと一緒にいたかったですよね。でも一緒にいた時間は楽しかったですよね。「ありがとう」またどこかで会えるから、その時まで待っててね!っていうメッセージを込めて看取りを考えていただく、老齢動物と付き合っていただくということになります。

 

 

ーーすごいですね。こういうのは全部﨑山さんが作られるんですか?

 

はい。老齢動物と飼い主さんに関わることがやっぱり好きなんです。

 

 

ーー少し語弊がありますけど、結構変わってますね。

 

え、そうですか(笑)。…いや、変わってるのかも。看取りの中に「生」を感じて楽しくなったのかもしれません。この冊子は実際自分が経験したこと、飼い主さんから診察室でよく聞く内容や日々感じたことを書き溜めたものになります。飼い主さんが必ず通る不安な老後や看取りに対して、少しでも老犬とのシニアライフを楽しみながら生活を送っていただいて、飼い主が心病むことなく動物を旅立たせてやれる。そしてまた、次の動物を迎えてもらう。それを少しでも多くの飼い主さんに伝えたくて…

 

仔猫ちゃんバージョン、仔犬ちゃんバージョン、老犬バージョンまでできているので、あとはアダルトバージョンを作れば終わりです。ゆりかごから看取りまでです。

この冊子を手に取られる方は、アダルトの犬の方もいつかのためにと持って帰ったり、近所の人にあげるのとか言って持って帰えられます。看取りが差し迫っていたり、覚悟しないといけないなぁなんて思っている人は涙しながら読んで、

「あかん、もうこれ以上読んでられない」ってなって、本を伏せるけど、でも

「逃げたらあかん」

って、なって読んで泣いてってことを繰り返しながら、看取りを迎えられる方もいらっしゃるし、様々ですね。でも、飼い主さんから、「どうなっていくのかがわからないのが一番不安やったから、本の通りだったねとか、覚悟ができたから、つらいけど、なんとか見送れたわ」って言ってもらえた時、少しは役にたてたのかな…なんて思います。

 

ーー社会性の塊ですね。

 

老齢動物を扱うってことは必ずここ(看取り)を視野に入れて、次の社会復帰を目指すところまで視野にいれておかないと、この業界が存続することが厳しいんじゃないかなって、私は最近強く思うんです。一生懸命になりすぎて、やり切って、精神的にも金銭的にももう動物飼わなくてもいい状況にさせてしまう。一種のバーンアウトにさせてはいけないんだと思うんです。

 

ましてや、ただでさえ犬の飼育頭数が減ってきて、猫が増えている。

そういった中で、やっぱり動物たちのクオリティオブライフも考えながら、飼い主さんの心の健やかさも考えながらとなると、やっぱり老齢と看取りはニアリーイコールでくくって次を見ておかないとダメなのかなって思ったりもします。

 

なので老齢セミナーをやっても、何をやっても、必ず看取りの話はついてきます。

たまに動物病院でそんな看取りのことを考えるなんて不謹慎なと、怒られたこともあるんですけど・・・。

 

ーーえ、そうなんですか。

 

はい。生かす場所だろってスタッフからも言われることもありますし、飼い主さんからも、 こんな部屋(霊安室)作ってどうするの、って叱られたことも実際はあります。だからダメなんだよっと言われたこともあります。精神論じゃないですけど、生きるっていうことは死に向かっているっていうことで、そこは絶対揺るがない事実なんですよね。

 

死は特別なことではないんですけど、現代は、核家族が進んで、死を迎える場所が病院など限局されてきて、身近でなくなったといったほうがいいのかもしれません。結局「死」っていうものが何かもわからない世代の人たちが、「死」を目の当たりにして、迎えようとしている。

 

ましてや、動物に癒しを求めて、動物に依存・共依存して生きている人が多い。その動物の死を受け入れないといけない。予備知識やサポートがなければ、そんなの動物も飼い主も破綻しますよね。

なので、そうさせないためのものなので、お叱りを覚悟でやります。

 

ーーなるほど。

 

あと、先ほども少し話しましたが、当院には霊安室もあるんです。病院って生かすところなんですけど、やっぱり全員が全員生かして返してあげることはできないので。

 

移転する前の病院はスペースがなくて、診察室で看取りの対応をしたり、

お別れをしていただいたり、亡くなった動物を安置する場所がなくて、

使わない時はレントゲン室に安置していたりしましたが、移動とか温度管理とか何かと大変というか…不便で。

 

 

こういったところも必要かなと思ってお願いしてスペースつくってもらいました。やっぱり飼い主さんは一生懸命お世話しているので、最期命を落とした場所や診察室には受け入れられない。入れないとおっしゃる方がいらっしゃるんです。

 

特にエマージェンシーで亡くした方は、心電図の音が耳について取れません。また、病院に来られた時に心電図の音を聞いて、「誰か調子悪いんですか」って気にして聞かれる方もいらっしゃいます。

あとは、しばらく落ち着くまで、病院に来られなくなっちゃったという方もおられます。

 

日本人は儀式を大事にして、儀式によって気持ちを切り替えるということをしますので、こういったことからこのような、別れのお部屋をつくって、そこで亡くなったという事実を受け止めて、帰っていただく。

 

亡くなったことは亡くなったこととして受け入れていただいて、次の、そして明日への1歩を踏み出すために何ができるかを考えてこの部屋から私たちは飼い主さんや動物を送り出すんです。

 

どうしても看取りに興味が私も強かったので、このようなことも含めて、老齢動物に対応できる施設でありたいということも踏まえて、デイケアルームと 霊安室は絶対必要だって言って、入れてもらったんです。

 

ーーちなみに、高齢犬へのサービスはいつごろから取り組まれたんですか。

 

老齢犬について取り組んだのはおそらく、7年くらい前じゃないでしょうか。実際、具体的に 組織として、取り組み始めたのが7年前でしょうか。この病院に移ってきて、デイケアルームがあっての本格的なスタートだったと思います。

こういった話はたまに他の動物病院の先生や動物看護師さんにいろいろセミナーの場で色々話をするんですけど、

「真似できない」って言われます。

 

ーー「真似できない」ですか。

 

「こういう風にやればいいですよ」

って、方法をお伝えしても、システムや人数がないとできないって言われます。

やっぱり組織の力と、大きな熱量がないとできないことは確かなので、なかなか他の病院さんが真似できない部分なのかなと想像します。

そう、人とシステムがないとできない。

うちは、やっぱり病院をできるだけ組織化して、その中でやっているのが強みなんだと思います。

もし、本当にやるのなら、ビジョンを描き、何をどこまでやるかをはっきりと決めておくことで、限られた人とシステムでも老齢動物に対するケアを行えるはずです。

ほかの病院のやり方を、そのまま、まねしたってできるわけないじゃないですか。そこは実際やる人とシステムが自分たちのものであるということが重要ですし。いろいろなシステムを参考にして自分の病院のシステムを作ることが始めの一歩です。あとはやりたいのか、やりたくないのかだけの話です。

 

そもそも、忘れられないくらいに一番大事なことは、シニアケアについてもそうですが、大前提として院長の理解がないとやれないと思います。うちの院長は理解のある方なのでそういった意味でも大変ありがたいと思っています。

 

 

ーー実際そうですよね。こういう土台もそうですけど、組織の基盤ってずっと積み上げながら、今に至るって感じですもんね。

 

そうです、そうです。実は私、組織のあり方っていうのは、院長よりうるさいのかもしれません。院長はおおらかな人なので、

「やってあげたらいいやん」

って、感じですけど、私は組織としてそれが正しいかどうか、でしか判断をしないんです。

もちろん情もありますけど、組織の中の天秤である為には、誰しもが納得いくような状況でない限り特例はありません。もし、偏った一人の特例を許してしまうと、組織としてうまく回らなくなります。

 

あとの残されたスタッフたちがどんな思いをするのか、それをわかってやるのか、っていうことを考えるので、院長先生と喧嘩してしまうこともあります。

 

別に看取りだけじゃなく、老齢だけじゃなく、リハビリテーションや、医療人としての取組もそうですけど、誰かがいなくなって、このシステムが潰れるんだったら、ダメなんですよ。

やっぱり組織としてやらないとダメだと思います。それが組織における責任だと思うからです。

 

 

私にとって、もし私が今日交通事故で死んでも、明日からも彼ら(スタッフ)がこのシステムにのっとって、飼い主さんの動物を受け入れられるっていうのが絶対的基盤なんです。

 

私がいなくても全然大丈夫っていうのが組織ですし、システムですよね?いついかなる時も、飼い主さんの大事な動物の命を預かれないと動物病院としてはダメですもんね。

 

そこの部分は常に思っています。

なので、うちの病院の中の様々なこと、要するにスタッフの仕事への臨み方、ケアの仕方、目標を決めること、などはすべて病院理念に繋がっていますし、そういった部分のシステムっていうものが全部できあがっているんです。

 

スタッフを評価する時の基準とかも全部決まっています。そういうことをやっておかないと、ブレてしまうからダメですよね。

 

ーーすごいですね。経営方針発表会は年に1度とかやられるんですか。

 

はい、やります。スタッフの評価をまず秋から冬にかけて行って、面談をして、その中で個々人の意見を聞き、春先に1年間のまとめをします。そして年度代わりに新しい年間目標を出します。また、スタッフにはそれぞれ院内での責任を持ってもらうために各部屋の担当者を決めています。3階には3階、オペ室にはオペ室、待合なら待合、っていう感じで役割分担を決め、委員会にも出て、組織的に全部を運営してもらうって感じです。

 

ーー委員会もやられてるんですか。

 

委員会もやってます。献血委員会、診療報酬委員会、リスクマネジメント委員会、福利厚生委員会、環境整備、倫理とかいろいろあります。で、全部月1 回の全体で行うミーティングで発表してもらいます。例えば、今献血は献血頭数これくらいで、輸血回数は何回で、こんなトラブルありましたみたいな感じで報告をして共有しています。

…話がそれちゃいましたね。

 

 

ーーちなみに、老犬のもので飼い主さんに一番喜ばれるサービスって何がありますか。

 

やっぱりケアの提供ですかね。例えば体位交換ってどうしたらいいんだろう?おしっこするとき座り込むけどどうしたら座り込まないで済むんだろうとか、どうやってお世話したらいいんだろう。相談できるところがなくて連れてきちゃったとか…本当にちっちゃい日々のことですね、それを教えてさしあげることですね。お金をかけないっていうのも大事で、お金をかけずにすぐできることをお伝えするってことは、すごく喜んでもらえます。

もちろん、必要なものにお金をかけてもらわなければなりませんけど。例えば褥瘡マットや食事などですけど。

 

ーーなるほど。ちなみに、カウンセリングっていうところで実際にお話しするって感じなんですか。

 

はい。基本的にはカウンセリングでゆっくり話したいんですけど。実際ちょっとした外来の中で、これで困ってるっていうような飼い主さんからの言葉やしぐさにアンテナはって、キャッチしてすぐにお伝えする。なので、引き出しの多い人間の方が重宝されますし、引き出しが少ないとなかなかお呼びがかからないし、自分からも行きづらいっていうのは実際あります。

 

なのでアイディア次第で何とでもみたいな感じもあります。うちは車いすも作っているので、車いすの提案もその場でしてしまいます。

 

ーーすごいですね。そのあたりの教育カリキュラムはあるってことですか。

 

カウンセリングに関しては、いきなりコアな話もしないといけなかったり、飼い主さんの表情や発している言葉と真意が違ういう状況を見極めないといけないので、ベテランや、カウンセリングを勉強したスタッフが始めに入って行います。それを新人や慣れていないスタッフが見て勉強し、実際ベテランのサポートをもらいながら自分でやってみてフィードバックをもらうといったやり方で行っています。そのほかには、教育カリキュラムもあります。1年目の看護師さんには何を望む、2年目の看護師さんにはこれを・・・って感じで年間通して、社会性から、業務内容から、技術的なことから、全部それは決まっています。

 

ただ、全部皆さんが網羅してやっているかといわれると、そうではないですけどね。一応枠

組みとして、外に出しても恥ずかしくないレベルにはしています。みんな管理されるのは嫌がりますけどね(笑)。

でもまあそんなに難しいことをやって枠にはめすぎても進まないので…仕方がないので、大まかに、外れないようにしか出来てないのが実際ですけど。

 

ーーそれを形にする能力、それは﨑山さんが基本的にやられてるって感じですよね。

 

院長は苦手みたいなので(笑)。ただそこを私が補っています。でもやっぱりそこには、信頼してくれて、任せてくれて発案したことを支援してくれることと、出資してくれる院長がいてくれないとできないことなので、お互いに協力関係があってでいいのではないかと思っています。ところで、飼い主さん向けのセミナー内容みられますか。

 

ーー見せていただいてもいいですか。プレゼン資料も﨑山さんが作ったんですか。

 

そうです、全部作りました。始めに、何歳ですかっていう質問も交えて動物の年齢の計算の仕方もお伝えしてリラックスしていただきながら、体内の変化が起こりますよ、見た目だけじゃない心の変化もあるんですよということもお伝えして、進めていきます。そして、本題に入る前に、動物たちのこと考えていただきたいので、動物たちの本質、そして安全基地って何なんだろうっていうのを考えていただきます。

 

この話(安全基地)を飼い主さんに理解をしていただいて、マインドの部分から飼い主さんに気づいていただかないと、表面的なケアだけやっても飼い主さんが疲れちゃう。私たちはこの子たちのマインドを守っているっていう風に思っていただかないといけない。

 

あとは、痴呆のチェックポイントと、受け止め方ですね。運動での予防であったり、体を動かすためのマッサージの方法をお伝えします。外に行きづらくなる分、脳みそ使いましょうってことで、室内エクササイズの話をしたりだとか、ケアグッズですね。

 

あとは、フードの説明です。サプリメントのおすすめとか、自家食のメリット・デメリット、なども網羅していかないと・・・ステンレスでは匂いもたたないし、味も損ないますよと食器の選択。お風呂の入り方とか、をだいたい90分で喋っちゃいます。

 

 

ーーすごいですね、内容が。

 

詰め込みすぎます(笑)あとは、動画で実際のお世話の仕方を見ていただきます。動物看護師さん向けにもこのセミナーを行います、基本的には内容は変わらないですけど、飼い主心情も含めた実例や、お世話の仕方なども話します。

 

ーー何から何までありがとうございます。ちなみになんですけど、この高齢犬のことをやろうと思った最初のきっかけっていうのは何なんですか。

 

何だろうなぁ・・・なんかね老齢動物ってかわいいんですよ。なんか酸いも甘いも全部やんちゃな時期を乗り越えて、別世界で生 きてる害のないかわいい存在、みたいな。だから老齢動物が怒っててもそんな腹が立たないんですよ。

 

ーー愛くるしい、ですか。

 

あ、そんな感じです。なんかかわいいんですよ。飼い主さんもパピーの時はかわいいじゃないですか、アダルトの時は一緒に楽しんでるじゃないですか、でもシニアだけはなんか困ってるっていうか悩んでる、そんな人が多いのかなって思います。

 

動物看護師心とか魂に火をつけられる気がするんですよ。困っている人に何かをやってあげたい、ちょっとでも何かに寄り添ってあげたい、手助けしてあげたい、みたいなそんなところがたぶんきっかけなんじゃないかな、と思います。

 

ーーほんと﨑山さんが主導でやられている感じですよね。

 

きっかけを作ることで、あとはスタッフが考えながらも迷いながらも企画を育ててくれるんです。 そういう意味では私が主体ではないのかも。

 

 

ーーなるほど。実際デイケアとリハビリっていうのは、別個のものになってしまうんですか。

 

機能回復と身体のケアは別ですね。リハビリ担当者が全部プランを立てて機能回復的なリハビリをしますし、デイケアはケアをするという感じで す。求められている内容が違うので、そこは一緒にできないかもしれません。

 

ーー﨑山さんから見てでもいいんですけど、高齢犬で特にデイケアっていうのを注力するってなった場合に、やっぱりある程度人の人数であったりとかって必要になりますか。

 

人は絶対必要です。なぜかというと、外来を回して、入院や往診、手術、環境整備してってなかに、わざわざ介護をする時間って作らないと難しい。そして同じ人間がずっと世話することで飼い主心情になってしまうし、介護者の心も疲れます。スタッフサイドのペットロスも深刻な問題なので、その部分もちゃんと管理してローテーション組んでおかないと、辛いと思います。バーンアウトさせてはだめだと思います。

 

それで重要な人材がいなくなってしまうととんでもないことなので。すごく大事ですかね。スタッフのことを考えて、負担を分散することもスタッフの満足度にも繋がりますよね。

 

ーー最初は手探りな状況から今があるわけですよね。

 

そうです。反発もありましたよ、デイケア・ショートステイやりたいって言ったときに。入院している動物との線引きはどこにあるのかとか、うちは動物病院でペットホテルじゃないんだっていうスタッフもいるので、そこをどう説明するんだとか…そこの定義づけもきっちり全部ファイルにしてやりました。見直しは定期的に必要ですけれど。カウンセリングシートもあるし、その動物たちのケアのためのカルテ記録用紙もありますし、手引書を用意して、何回も話し合って、改定を繰り返して…そんなところでしょうか。

 

ーーカウンセリングシートとかも1から作られたのでしょうか。

 

1からですね。自分たちが何の情報を聞いておけば、この動物を飼い主さんのケアに近しい状態でケアができるか、というところに重きを置いたシートを作成しました。

 

でもやっぱり飼い主さんに勝るものはないんですよ、こんな施設を立ち上げて言うのもなんなんですけど。例えば、飼い主さんが食餌をあげていると誤嚥が少ないんですけど、プロである私たちがあげたら誤嚥するときもあるんですよ。その微妙な角度とか、タイミングとか、温度とか、動物との呼吸の合間とかがやっぱりあるんでしょうかね。

 

飼い主さんは素晴らしいなあと思います。プロでもそこは及ばない愛情看護です。それをわかったうえで、預からせてもらう必要性と危険性の説明もして、飼い主さんにも理解していただいて、お伝えさせていただくという感じです。

 

亡くなったことも実際に一例あるので・・・預かって、次の日かな、急に亡くなってしまった動物もいてて、老齢なので急な状態の変化もありますよってさらっとは説明してたんですけど、さらっとではダメだなと改めました。

 

そこから、飼い主さんの表情とか状況とかを見て、動物の状態中心でこれやったら大丈夫かなとか、っていうのを確認しながら慎重にですかね。

 

老齢動物世話している人って致し方なし、背に腹は代えられなくって預けられている方がほとんどだと思います。疲れてる、疲れてるっておっしゃってますけど、自分たちでお世話をやりきりたいんですよね、本当に世話をする人は。

でも預け先がないし、病院と一緒になっているんだったら、ここが安心。なので、私たちの力をほんとは借りたくないけど背に腹は代えられない状況だから、預ける。と、当院を選ばれている状況でしょうか。違う環境になって、動物がよく動いてしまって、褥瘡作ったりしたときに、失望されるときもありますけれど、預かった最後には、動物病院と一緒だから何かあっても安心でした。このサービスがあって助かりました。ペットショップじゃなかなか受け入れてもらえないし。またお願いしますって言ってもらえた時はうれしいですね。

 

 

飼い主さんを見ていても、目にクマ作って表情も土気色の顔をして、明らかに何日 も寝ていない状況で、お母さんも心配して、「お父さんがね、この子につきっきりで」って、完全に生活のリズムや、その人らしい生活が終わってるのが目に見えてわかるんですよ。

 

なので、私たちから

「預けませんか」

って、言ったときでも、

 

「いや、もし預けたときになんかあったら。私たち(飼い主)がいないとだめですから」っていう話になります。

 

介護って365日24時間。気を休める時がないですから。

 

自分が全部やらなきゃって、中にはイライラしてうまくいかなくて動物をたたいて虐待よねって追い詰めすぎて…だからこそ、時間をかけて話をします。

もし、それで飼い主さんが体を壊したら、笑顔をなくしたらその子の介護どうするのって。だから少しだけ離れて気分をリフレッシュしてまたお世話ができたほうがいいんじゃないですかって。

 

時間をかけて絡まってしまった糸をほぐすように

「無理強いはしないけど、もしよかったら、1時間でもお預かりさせてもらって、お父さんその間に仮眠するとか、ほかに最近できてないことないですか」

って言ったら、

 

「散歩がいけてない、読書ができてない・・・」という話になるので、

 

「じゃあその1時間で自由に好きなことをしていただけませんか、その間は私たちが責任もって看ます」

って、お伝えして、1時間だけ預かったりもしています。

 

リフレッシュがないと、飼い主さんたちもとても疲弊してしまいますので。様々な提案ができて、許容してくれる動物病院かどうかっていうのがすごく重要かもしれないですね。

 

 

 

おわりに

高齢犬のデイケアサービスを実施する場合は、病院の方向性として高齢犬のケアにしっかり向き合う必要があります。

あと、組織の基盤もしっかり重要視しないといけないですね。

 

是非高齢犬のサービスを充実させようとお考えの院長先生は参考にしてください。


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